
多重人格者であることによる、複雑な三角関係。
あらすじ
うさぎのユイの飼い主である光には大っぴらには言えない趣味がある。
女装──その姿を取る時、光はユイという名前の女の子になりきる。ある日尊敬する獣医師から、女の子であると勘違いされて良い雰囲気に。しかし光にはどうしても踏み出せない理由があった。そして、友人だと思っていた美大生のことも、雨の夜の一件以来気になり始めていた。
一方獣医師は、誰にも言えない心の闇を抱えていて…
悩んだ光が答えに行き着くまでの、紆余曲折の物語。
別作品『インソムニア』は、こちらの第三章と対になります。
掲載サイト
いただいたレビュー
───複雑な事情を抱えた二人の執着地点
【暗い過去を抱える彼と、人格をいくつも持つ主人公】
引用元:crazy’s7様 おすすめBL作品・レビューまとめ
始まりは、女装をした自分に彼が惚れてしまったことだった。
人間の人生とはとても不思議だ。それはきっと、小説もリアルも変わらないと思う。生活の中で、自分では気づかないうちに”分岐点”で沢山”選択”をしているに違いない。
この物語の主人公は、心が弱かったため、辛いことから逃げてしまう癖がある。問題解決能力に少し欠けてはいたが、それを補う必要があった。だからこそ多人格を持つことになってしまった。
多重人格などは、子供の時に虐待などを受けていると起きやすい症状であり、それは自分自身を守るためであると言われている。自分が知らないだけで、意外と身近なことなのかもしれない。
それに対し、暗い過去を抱える獣医の彼は病んでいながらも、表には出さない。もちろん軽々しく人に言えるようなことでもなく、一見大人に見える獣医さんだ。
【登場人物の魅力】
自分は申し訳ないが、この獣医さんに一番魅力を感じてしまった。
主人公はとても危なっかしく、フラフラしているように感じるが、無理もない、各人格が別の相手を好きなのだから。自分の幸せと本能の狭間で揺れているようにも感じ、見ていてハラハラしてしまう。
一方獣医の彼は、”大人”というのもあるのかも知れないが、自分自身と真摯に向き合い、一つずつ着実に問題を打破しているように感じる。
彼は初めの頃、男女に拘っており、自分の本心に不安を感じ、自分自身に言い訳してしていたが、相手を個として考えるようになり、悩む方向も変わっていく。多人格であっても彼は一人の人間であり、彼の中の人格も含め”愛している”という結論に到るまでが、とても丁寧に描かれており、彼の魅力が充分に伝わってくる。
【複雑な三角関係】
獣医の彼に比べ、恋のライバルである絵描きの彼は、かなり即物的である。
若いからか、一人と向き合い共に人生を考えていくというのには向いてはいないように見える。しかし、それには理由がある。彼の事情についてはこの作品では書かれてはいないが、彼にそうさせてしまった人物が存在するのである。(詳しくは続編を)
ただ彼は、性欲と独占欲が強く、この三角関係を複雑にしているのは否めない。
続編があったら是非、読んでみたいと感じる作品です。
お手に取られてみてはいかがでしょうか?
獣医さんに萌えます。おススメです。
心の傷と、惹かれ合う想い。光と闇が織りなす繊細なドラマ
主人公の光は女の子になりたいという願望があり、獣医の先生にほのかな恋心を抱いていた。偶然にも女装した姿を先生に見られ、彼に好意を示されたことで密かな憧憬が現実的なものへと変化してしまう。しかし、同時に友人の柴田も光への想いを露わにし、板挟みになった光は自分をふたつの人格へと二分してしまう。先生に恋をしている女の子の心を持った「ユイ」と、柴田に惹かれる光。体はひとつなのに、それぞれの人格が別の人間と恋愛をするという、複雑な三角関係。
引用元:光乃えみり様 エブリスタ
この物語には様々な魅力がありますが、その中でも特筆したいのは多様性の描き方です。同性愛や多重人格といったモチーフの他に、一般にタブーとされる行為や関係性も多く取り上げられていますが、当事者の心情と物語としての客観性が非常にバランスよく描かれていて、読み手に違和感なくそれが受け取れるような作品になっています。これは同時に、作者さんの多様性に対する目線であると感じました。
一見完璧な大人の男性に映る獣医の先生ですが、彼も過去の出来事から深い心の傷と闇を抱えており、そのことに苦しんでいる。しかし、そんな自分をまともじゃないと内心で責める葛藤や、その苦悩を外界にぶつけることなく人生に向き合おうとする姿にとても好感を覚えます。それらの心理は繊細かつ丁寧に綴られつつも、深く掘り下げすぎて読み手が辛くならないような一歩引いた視点で進んでいきます。これには作者さんの人柄が反映されているように思いました。多様性を受け入れる穏やかな肯定の眼差し。俯瞰で見守るような静かな心。
時々冷やりとするような展開もありますが、暗闇と光の間を行ったり来たりするような流れそのものがこの物語の魅力であると言えます。予想のつかない展開に引き込まれながら、どうぞ彼らの行きつく先を見届けて下さいませ
